2010年5月19日水曜日

驚くべき竹の生長

竹の伸びが早いのはよく知られているが、実際その速度は想像を越えるものがある。 写真のモウソウチクは24時間でなんと120cm前後も生長するのである。モウソウチクに限らず、竹の仲間は一日1m以上伸びることも珍しくないのだ。 実に一時間当り5cmも伸びることになる。 竹の細胞は一秒間に約9万個の細胞を作って伸びていく。だがある程度に太くなると幹の成長は止まり、丈だけが長くなる。
 
 「雨後のタケノコ」という諺があるように、雨の後は竹の生長が早いらしい。
いつかの名探偵コナンで、雨の後の竹の生長を利用してあらかじめ眠らせておいた被害者の首を吊らせて殺すというトリックがあったが、あの時コナンが「雨の後の竹は2m近くも伸びる」と言っていたような記憶がある。 一日で大人の身長を超えるほどに生長するのだから驚異的だ。
 
 竹は全体が伸びるのではなく節ごとに伸びる。線引きで例えると全体がびよーんと伸びるのではなく、目盛りの間がそれぞれ伸びていくのである。その節もちゃんとタケノコの状態のときにできていて、数もほぼ一定している。タケノコを縦に切ってみると節が沢山あるのがよくわかるだろう。
 しかし、竹がなぜこんなに一気に伸びる事ができるのかはよく解っていない。身長が伸びないと悩んでいる方には、竹はうらやましい植物かもしれない。

2010年5月18日火曜日

甘柿と渋柿の見分け方

売っているものならともかく、人からもらったりこっそり失敬してきた柿を食べるのはある意味賭けである。 甘いか渋いか、正にロシアンルーレット。甘けりゃ天国渋けりゃ地獄。柿は喰いたし舌は惜しし。切って皮をむいたはよいが口に入れる決心がどうにもつかない。結局家族の誰かを騙して人柱に立てたりする。 ぜーんぶ甘柿ならいいのに、一体どうして渋柿なんてものがあるのだろうか?
 
 食べるときには渋はいやなものだが、実は結構有用なのである。渋みの原因は果実の中のタンニン細胞にあるシブオールという物質。名前からして渋そうだ。シブオールが果実の中で溶けた状態だと渋みが発生する。つまり甘くするにはシブオールをなくすか溶けなくしてしまえばよいわけで、よく熟成させるとこの物質は大概無くなってしまう。 もともと大体の柿は渋柿なのだ。 そしてこの渋は昔は雨傘や渋紙など防水や防腐に使われ、今では主に染料として利用されている。
 
 さて、気になる見分け方だが、これは切って見るまで判らない。いや、種類によっては切っても判らないことがある。 しかし一応「これは多分甘いよ」という目安はある。
それは柿の切り口に黒い粒々があるかどうか、ということ。粒々は不溶性になったシブオールが固まって見えるもので、これがあると渋みが少ないことを意味する。 だが、この斑点が全くないから必ず渋いというわけでもなく、ここが難しい所だ。要するに黒い斑点は甘いことの「お墨付き」だと考えればよいだろう。 そしてお墨付きのないものは…やっぱり誰かを人柱に立てるしかない?

2010年5月17日月曜日

色つきタイヤはなざ無いのか

現代はカラー志向である。一昔前は、この製品にはこの色という「定番の色」があったが、今はカラーバリエーションも増え、それによって売り上げが増減する世の中だ。
 だが、やはり変わらぬ定番の色を守っているものも数多い。例えば鉄アレイ。普通あれは必ずといっていいほど黒い。やはり黒が一番重厚感が出るからだという。また、赤や黒の冷蔵庫なんていうのもない。白や水色など清潔感がある色が選ばれている。
 
 こうしてみると、製品のイメージにあった範囲内でカラーが決められているのがわかる。
だが、車のタイヤはどうだろうか。工場で使われるフォークリフトなどごく一部を除いて、「黒」しかない。ホイールの色は数あれど、タイヤは黒以外まず見かけない。 赤や白のタイヤがあっても良さそうなものではないか。なぜタイヤは黒色しかないのだろうか?
 
 タイヤはゴムでできているが、ゴムそのものは元々乳白色をしている。つまり、タイヤの黒は天然のものではない。
 実は、黒色の正体は炭素の粉である「カーボンブラック」と呼ばれる物質。カーボンブラックはタイヤの原材料の実に25%程度を占めており、補強剤として使われているのだ。
もしこれが入っていないとタイヤは消しゴムのように柔らかくなってしまい、とても道路を走ることはできない。タイヤの黒にはそれなりの理由があったのである。
 では、どうしても色つきのタイヤを作れないのかというと、まあ作れないことはない。他の補強剤を使えばカラーのタイヤを作れるが、強度は著しく落ちてしまう。カーボンブラックに代わる材料はいまだ発明されておらず、実用に耐えるカラータイヤは作れない、というのが実状のようだ。
 
 いずれ技術が進めばカラータイヤは当たり前の時代が来るかもしれない。 だが、そうなってもやはり黒タイヤが一番人気がありそうである。

2010年5月16日日曜日

「円」という単位は一体誰が考えついたのか?

日本の通貨単位である円、日本銀行券を見ると「YEN」と表記されている。
しかしこれでは発音は「イェン」になってしまう。なぜそのまま素直に「EN」としなかったのだろう? 
 それは「EN」では「イン」と読まれてしまうおそれがあるため。外国人は「イ」という発音が苦手で、そのためにYをつけて「イェン」と書くのである。 これは明治時代からだというが、造幣のアドバイスをした外国人が聞き間違えたのかもしれない。
アメリカの「dollar」これは本来の発音は「ダラァ」といった感じだが、日本人はドルと読む。それを考えればおあいこのようなものか。
 
 さて、この円、なかなかうまいネーミングだと思うのだが一体誰が考えたのだろうか。
政府と言ってしまえばそれまでなのだが、中でも大隈重信は円の成立に大きな役割を果たしといわれ、円の考案者といえば彼の名が挙げられることが多い。 重信は今まで四進法だった通貨単位を十進法にしたり、銭・厘の導入など新通貨の成立に貢献したのだ。 それに、円について反対意見が出たときは親指と人差し指で円を作り、「円形がお金を意味することは誰でも知っている。どうだろう、新単位はやはり円がよいのではないか」と言ったとか。
 何気なく使うお金にも意外なエピソードが隠れているものである。

2010年5月15日土曜日

スイカは野菜か果物か?

照りつける夏の日差し。熱い太陽。立ち昇る陽炎。麦わら帽子に虫取りあみの子供たち。姿を見せぬセミたちの大合唱。
そして、縁側に蚊取り線香とよく冷えたスイカ。お父さんはこれでビールがあれば最高である。 
 
 スイカの原産地はアフリカのカラハリ砂漠で、日本へは16世紀ごろ中国経由で渡来したといわれる。 中国つまり西方からきた瓜ということで「西瓜」の字が当てられる。現在栽培されている甘味のあるものは明治時代から品種改良重ねて作られてきたものだ。 普通は吐き出す種も食べられ、フライパンで炒めて皮をむいて中の白い部分を食べる。中国料理にも使われている。
 
 さて、西瓜は野菜か果物かという論争はあちこちで見られさして珍しいものではない。 甘味があって庶民の代表的「果物」ともいうべきスイカが実は野菜だとしたら、ちょっとがっかり(?)である。
しかしスイカは野菜に分類するのが正しいだろう。果物と野菜の違いは果実が樹になるか地面に這ってできるか、といわれる。 甘味があって樹になるものが果物だとしたら、スイカはこの範疇から外れ野菜である。 それにスイカはウリ科の植物。ウリを果物という人はいないだろう。こう考えればスイカを野菜と定義するのは致し方ないといえる。
 普通果物とされていても実は野菜というものはメロンやイチゴなどスイカの他にもある。結局の所これらはたまたま「甘い野菜」というだけのことなのである。 
 
 夏はスイカの他にもキュウリやとうもろこしなど、野菜がおいしくなる季節でもある。 冷えたキュウリに生味噌をつけてガブリ、なんていうのも乙なものかもしれない

2010年5月14日金曜日

しゃっくりの上手な止め方

しゃっくりというヤツはあくび、クシャミと並んで困った生理現象の部類に入る。クシャミなんかはまだ出そうになるのがわかるし、こらえようもあるのだが、しゃっくりはいつくるのかわからないだけにタチが悪い。おまけになかなか止まらない。だが、実はこれにはうまい止め方があるのである。それをこっそり伝授しよう。
 
 しゃっくりは急に寒いところに出ると起こる場合もあるが、多くは食後に起きるといわれる。
これは食事によって胃が膨れ、横隔膜を押し上げるためだ。 そういえばたらふく食べた後はよくしゃっくりが出る、という方もおられるだろう。
 もともと、しゃっくりは横隔膜の緊張と弛緩が呼吸のリズムと一致せず、一種の痙攣状態に陥ることによって起こる。ということは、何らかの方法でこの痙攣を止めてやればよい。この手段として最も効果的で簡単なのは、息を止めてしまうことである。 といってもピタリと止めるのではなく、思いっ切り息を吸い込んでグッと止め、あごを引き、20秒ないし30秒ほど止め続ける。これを寝転んでやると更に効果的である。立ったままでも弱いしゃっくりなら抑えられるが、強いものは横にならないとダメである。
 この原理は恐らく、肺を大きく膨らませることによって隣接する横隔膜の痙攣を強引に抑え込んでしまう、ということだと思う。思う、というのは経験的な立場からで、何も確固とした資料があるわけではないからだ。まあ理屈はともあれ、止まりさえすればそれはそれで文句ない。
 
 ちなみにこの方法、家の中なら問題ないが、外では結構難しい。立ったままでは息も止めにくいし、思いっ切り止めて必死な顔でいると、変な目で見られることが多々ある。しかも、会話も出来ないからますます「?」となり、いつしか人が近よらなくなるかもしれない…

2010年5月13日木曜日

ドーナツに穴があいているのはなぜ?

ミスタードーナツにでもいってドーナツを買ってみると、実に個性豊かなバリエーションがあり、一概にドーナツ=穴があいているとは言えなくなってはいるが、やはりドーナツといえば誰もがあの典型的なカタチを思い浮かべるだろう。
 「ドーナツ型」と言われるほど社会的認知度の高いドーナツだが、一体アレ、なにゆえあのような穴があいているのだろうか? まことにくだらない、この上なくどうでもよい疑問だが、気になるものは気になる。そこで、「ドーナツの穴の謎」を調べてみたい。
 
 穴といえばクッキーに穴を開けるように熱が通りやすくするためかとも思われるが、穴のあいてないドーナツがあることからすれば、穴が不可欠であるとは言えないだろう。
それとも、棒にでも材料を巻きつけて焼くためにあのような穴ができるのだろうか。
いやいや、それも違う。 実は、今日知られている理由は意外にあっけなく、「オイオイオイそんなんでいいんかい」とでも言いたくなってしまうものだ。
 
 穴あきドーナツの犯人は、アメリカのハンソン・グレゴリーなる少年。母親が作っていたケーキに、何を思ってか衝動的に穴を開けたというのである。錯乱したとしか思えない。 「ドーナツには穴が開いているべきである」彼の本能がそう告げたのだろうか。この気持ち、分からなくもない。思春期の破壊願望という奴ではなかろうか。 しかし、このエピソードには別バージョンがある。
 ハンソンが母親の揚げるドーナツの真ん中あたりが生っぽいと文句をつけるので、母親が真ん中をくり抜いて揚げることにしたのだそうだ。 母親が「よく火が通るように」という親切心からそうしたのか、「だったら真ん中食べるんじゃないっ!」という怒りからそうしたものかは知る由もないないが。
 しかし、こんなエピソードがどうして広く知られるようになったのだろうか。そのほうが謎である。

2010年5月12日水曜日

電子レンジの仕組み

今ではすっかり調理に欠かせないものとなっている電子レンジ。レンジがなかった時代が想像できなくなるほど当たり前になり、普及している。 
 しかし、そんな電子レンジが一体どうやって食品を温めているかご存知だろうか。 一見サウナのような光を出す箱の中で食品がグルグル回るだけである。それで温まるのだから不思議だ。 しかも食べ物と離れている容器はほとんど熱くなっていない。
 
 物が温まるという事はその物質を構成している分子の運動が活発になるということである。 普通の状態でも分子は少し運動しているが、コンロなどにかけられて熱エネルギーをもらうと、さらに活発に運動するようになる。 つまり分子を運動させれば温まるわけだ。 なんのことはない、走った後は体が熱くなるのと同じことである。
 
 分子運動を活発にする方法は色々ある。火にかけるのは手っ取り早いし、カナヅチで石を叩くと熱くなる、あれも同じことだ。 電子レンジは「マイクロ波」と呼ばれる電磁波を照射することで分子運動を強めている。 マイクロ波は水の分子に作用し、運動を活発にする働きがある。だから水分を含んだ食品を温める事ができるのだ。 お皿などが温まらないのは水分子があまり入っていないためである。
 -まあ、こんなことを知らなくても、今日もママは冷凍食品を笑顔で食卓に出せるのである。

2010年5月11日火曜日

ガンになるしくみ

日本人の死因のトップ3に必ず入っているのが悪性新生物、すなわちガンである。 色々な治療法がメディアで取り上げられているものの、特効薬はまだないようだ。 だが、ガンになる仕組みは最低限知っておきたいもの。知っているだけでちがうことは随分ある。
 
人の体では毎日新しい細胞が作られている。細胞は遺伝情報をコピーして作られるが、この時にエラーが発生してしまう事がある。焼いたCD-Rも時々読めなくなったりする事があるがあれと同じことだと考えてもらえばよい。 細胞をコピーするときエラーが出る原因はCDと同じく、傷だ。煙草を吸うと咽頭ガンや肺ガンになりやすいのは煙草によってその部分の細胞が痛めつけられるからである。 また、辛いものを食べると咽頭ガンや胃ガンになるといわれる。これは辛さを感じさせる分子構造が尖った形をしていて細胞を傷つけてしまうからだ。 更にウイルス性のガンもある。これはガンを発生させるウイルスがあるのではなく、ウイルスによって傷ついた部分がガン化するという意味だ。
 このようなことは日常的に起きているがそう簡単にガンになるわけではない。ガン化した細胞は白血球など体の防御機能によってすぐに排除されてしまうからだ。
 
だからガンを防ぐには体にダメージを与えない生活をすることが重要。暴飲暴食、煙草などは慎むべき。 そして定期検診を受けること。早期発見ならばほとんどのガンは取り除く事ができるのである。

2010年5月10日月曜日

おもちゃの語源

「おもちゃの日」というのがあるのをご存知だろうか。この日がいつかを知っていたら、相当のおもちゃ通か、あるいは「この日なんの日」マニアであると見て間違いない。 
 おもちゃの日は5月5日。子供の日、端午の節句と同じである。制定したのは日本玩具協会それに東京玩具人形問屋協同組合といったえらいマイナーな方々。子供の日だからおもちゃの日にもしてしまおうという、実に単純な発想である。
 
 ところで「おもちゃ」という言葉は頭の中で反芻してみても全く意味のわからない言葉である。「お」は接頭語だとして、「モチャ」ってなんじゃ?もしや外国語か ?とさえ思えてくる。
 実はこの言葉「玩ぶ」もてあそぶ、が元になっているとされる。もてあそぶというとなにやらいんぴな響きがあるが、これは「持って遊ぶ」の意味。 この言葉が紆余曲折を経て今の「おもちゃ」という言葉にまで変化したわけである。
 しかし、口に出して呟いてみるだけでなにやら遊ぶものという感じがしてくる。見事なネーミングである。

2010年5月9日日曜日

種なしスイカの作り方

やはり夏はスイカである。 トウモロコシや新鮮な野菜も捨てがたいが、塩を少量ふりかけながら食べる冷たいスイカは何物にも変えられない。
スイカを食べないと、「夏がきた」という実感がどうしても薄いものである。
 
 できることなら大口開けてむしゃぶりつきたいスイカだが、食べてるときにどうしても気になるのが種だ。中には気にせず飲み込んでしまうという豪な方もいるが、普通は面倒ながらも取り除くだろう。
だが、市販されているスイカの中には「種無しスイカ」というウソのようなスイカが存在する。一体これはどうやって作られているのだろう。遺伝子操作でもしているのだろうか?
いやいや、実はかなり地道で長い時間をかけてこのスイカは作られるのである。
 
 まず、種がある普通のスイカは、遺伝の性質を決める染色体が二組ある「二倍体」と呼ばれるものだ。対して、種無しスイカは染色体が三組ある「三倍体」という、種を作る能力を持たない特別な種類である。種がないので当然三倍体から三倍体のスイカは作れない。そこで二倍体のスイカを何とかして三倍体にするのだが、これにはなんと三年もかかるのである。
 
 まず一年目には普通の二倍体の種をまく。双葉が開いたときに、コルヒチンという染色体の数を倍にする作用を持つホルモンをかけて育てると、四倍体の染色体を持つ種ができる。
二年目は、四倍体の種を育て、雌花に二倍体の雄花の花粉をつけると、三倍体の種ができるのである。
そして三年目、三倍体の種をまくことによってようやく種無しスイカが収穫できるのである。
あまりに手間がかかるため、現在はなかなか入手困難なスイカだが、運良く見つけたら是非買って見るといいだろう。 そのスイカを作るのにかかった労力を考えれば、自然とありがたみがわいてくるというものである。

2010年5月8日土曜日

月下美人はなぜ一晩しか咲かないのか

和名が付けられた花の中には、粋なものがたくさんある。例えば「虞美人草」「紫式部」「綾波」「優曇華」「勿忘(わすれな)草」などなど。
 素晴らしい名前の花は数あれど、中でも最も美しく優雅な名の一つと言えるのが「月下美人」ではあるまいか。 美しさと気品が字面から伝わってくるだけでなく、詩的で、語呂もじつによい。このネーミングセンスは見事という他ない。
 
 花にあまり詳しくない方のために書いておくと、月下美人はサボテンの仲間で、サボテン科クジャクサボテン属に分類される。原産地はメキシコやブラジルといった南米熱帯雨林地帯。
 月下美人の名を聞いたことがあるという人でも、その実物の花を見る機会に恵まれた人はそう多くはないかもしれない。 よく知られているように、この花は年に1度、多くても2度しか花をつけず、咲くのは真夜中で朝には枯れてしまうからである。
たった2時間ほどしか花をつけない月下美人だが、20cmほどもあるその白くて大きな花は非常に美しく、また目に沁みるほどの馥郁(ふくいく)たる香りを立ち込めさせる。一夜限りのその希少な美しさのために、月下美人を栽培し開花を楽しみにする愛好家も少なくない。
 それにしても、月下美人はなぜ夜に咲くのだろうか。どうしてこれほど大きな花をつけるのだろうか。また花の色が白いのには意味があるのだろうか。最後に、なぜ一晩で花を落としてしまうのだろうか。
 
 これらの疑問に答えるためには、この花の原産地の環境を考える必要がある。 まず、植物が花をつけるのはその花粉を動物によって運んでもらうためだ。日本では主に昆虫がその役目を担っているが、月下美人のふるさとである熱帯雨林地帯では、もっと大きな動物も貢献している。 なかでも、月下美人が上客としているのは、コウモリである。
 多くのコウモリは昆虫などの小動物を主食とするが、木の実や花の蜜などを餌とする「果実コウモリ」と呼ばれるものもいる。月下美人の原産地では小型の果実コウモリが多いに花粉の媒介を助けているのだ。
彼らはホバリングしながら上向きに咲いた月下美人の花の蜜を舐めとり、同時に顔を花粉だらけにする。運よくそのコウモリが別の株に花粉を運んでくれれば、受粉が成立することになる。
 花粉のキューピッドが夜間活動するコウモリであることを考えると、いくつかの謎は解ける。昼の熱帯雨林はライバルになる植物が多い。それを避けて、月明かりの中でも最高に目立つ色である白の大輪を咲かせ、更に強力な香りを放って夜に活動するコウモリたちを誘因する。それにコウモリが乗ったくらいで折れてしまうようでは話にならない。大型で丈夫な花を咲かせる必要がある、というわけだ。
 では、数時間で花を落としてしまうのはなぜなのか。
明確な答えは難しいが、常緑植物である月下美人は子孫を残すのにあまり焦る必要がない、という要因があるかも知れない。また目立つ大きな花を咲かせるために大半のエネルギーを使い切ってしまい、花を長く保つ力がないともいえる。 月下美人は年に1度咲くと思われがちだが、十分な栄養を取っていれば2回花をつける。そのことからも、花にかけるエネルギーの比率がほかの植物よりかなり大きいということがわかる。花火のように、大きな力を一瞬で燃やしつくすのかも知れない。
 しかし、いくら理屈をこねてもこの花の神秘さと不思議さを解明することはできないように思う。見事な「自然の多様性」の一つと言うしかないのかも知れない。

2010年5月7日金曜日

シロアリはアリの仲間ではない

シロアリといえば家の柱を知らず知らずのうちに食い荒らして穴だらけにしてしまうにっくき昆虫である。 家屋に被害を与えるのは普通ヤマトシロアリやイエシロアリだ。 他の種のシロアリはコロニーと呼ばれる巣の中で生活するものが多い。シロアリ塚といって泥で作られた大きな塚も熱帯地方では見る事ができる。
 
 さて、このシロアリだが、名とは裏腹にアリの仲間ではない。むしろゴキブリに近縁である。なるほど嫌われ者という点では共通項があるように思える。 ゴキブリは3億年も前から進化していないというが、シロアリもその仲間だけあって、膜翅目のアリより原始的な透翅目に属する。 しかしその社会性は高度に複雑化していて、アリのそれに全くひけをとらない。 王、女王はもちろん働きアリや兵アリまでいるのだ。その統率の取れた生態は驚くべきものである。
 
 害虫だといって嫌うのが人情かも知れないが、ちょっと内面を知るだけでだいぶ見方が変わってくるものだ。 ―でも、シロアリの駆除はお早めに。
 

2010年5月6日木曜日

下痢と便秘の薬は同じもの?

白血病は白血球数が増加する病気である。対してエイズは白血球が少なくなるという症状がある。ということはこの二つに同時にかかれば相殺しあって二つとも治る…なんていうジョークがあるが、便秘と下痢に同じ薬が使われているといったらこれと同じようなものではないか。 だが、現実に便秘でも下痢でも同じ薬を売ることが多いのである。
 
 そのからくりを説明しよう。 食物を消化する腸が正常に機能していれば下痢にも便秘にもならないのは当たり前である。 しかし体調が崩れ、腸の蠕動(ぜんどう)運動が早くなると水分の吸収が不十分になり、便に水気が多くなって下痢になる。反対に蠕動が遅くなると吸収されすぎて便秘になる。
 つまり下痢も便秘も腸の調子が狂うことが原因という面では同じようなものなのだ。そこで腸の調子を整えてやれば便秘下痢どちらにせよ快方に向かうというわけである。
 これがいわゆる「整腸剤」というもので下痢にも便秘にもきく重宝な薬である。

2010年5月5日水曜日

光の正体

かの大詩人、ゲーテの最後の言葉は「もっと光を!」だったという話がある。 まあ、単に部屋が暗かったのだという説や、そもそも何も言わずに逝ったのだという説もあるが、これはなかなかの名言である。
光がなければものを見ることも出来ないし、そもそも私たちは誰一人として生きていけない。
 しかし、それほど重要な「光」なのに、実体を正しく把握するのは極めて難しい。 科学者でも完全に光の性質を理解してるとはいえないのである。 そう、光といいながら、正体は闇に包まれているといっても言い過ぎではないのだ。
 だが、それでも科学者たちの「もっと光を!」というたゆみない努力により、光の性質は少しずつ明かされてきた。 そしてそれは、私たちの常識からすればとんでもない特性を持つ、ということが分かってきた。
 
 ではそもそも、「光」とはなんだろうか。
光は、電磁放射の一形態のうち、人間の目に感知できるもの、と定義される。
電磁放射とは、例えば電波、また電子レンジに使われるマイクロ波、レントゲンのX線、更に赤外線や紫外線も含まれる。そして、このうち目に見えるものを光と呼んでいるわけである。
 現在の解釈では、光は波と粒子の両方の性質を持つ、という見方が一般的だ。 あるときは波として、あるときは粒子としての振る舞いを見せると考えられている。
また、光には質量がないとされている。確かに存在し、エネルギーを持つのに質量がない。これも興味深い特性である。
 
 そして光の性質として絶対的な法則がいくつか存在する。
その一つが「光速度不変の原理」である。これは、光は真空中では、いついかなるときでも一定の速度で進む、ということ。その速度とは、秒速29万9792.458メートル。つまり秒速約30万キロメートルである。
時速50キロで走る車から、30キロのスピードで前方にボールを投げたとしよう。するとボールの速度は50+30で80キロになる。 ところが、光はこの計算が成り立たない。時速1万キロのロケットから光を発射しても、1万+光の速さとはならず、光は依然として秒速30万キロで進むのである。もちろん、これは進行方向と逆向きに光を発射しても同じことだ。
 ちなみに、この「光速度は常に一定」という原理こそが、相対性理論のマスターキーとなってくるのである。
 
 もう一つの光の基本原理。それは、「いかなるものも光の速度を超えられない※」ということ。
ロケットをどんなに加速したとしても、絶対に光の速さは超えられない。加速すればするほど、重くなってしまうからである。この辺のことは相対性理論が大いに関係してくる問題である。
 
 上に挙げたものは光の持つ性質のごく一部に過ぎない。 この世界は難しいけれど面白く、奥が深い。
光の正体が完全解明される日が一日も早く来ることを期待したい。
 
※光の速度を超える性質を持つものは理論上は予言されている。だがそれは光の速度以下になることが出来ないという、理解に苦しむ特性である。

2010年5月4日火曜日

ブドウ糖って甘いの?

皆さんご存知のブドウ糖は血液中や甘い果実内に存在する果糖の一種で、グルコースと同じもの。 またデンプンはこのブドウ糖が鎖状につながっているもので、デンプンとして体内にはいった養分はブドウ糖に分解される。 さらに、気にする人が多い血糖値は血液中のブドウ糖の濃度を指す。空腹を感じるのはブドウ糖が少なくなっているという合図だ。逆に満腹のときは血糖値があがっているということ。
 
 このように私たちの体を根底から支えているといってよいブドウ糖だが、糖と言うからには甘いのだろうか?それになぜ「ブドウ」なのだろう。
 実はブドウ糖そのものが「ブドウ糖」というなんのひねりもない商品名で売られている。原材料名はもちろんブドウ糖一つだけだ。 私もこれを食べたことがあるのだが、なるほど甘かった。白い粉を固めたチップ状になっていておやつにも丁度いい。なぜかコーラによく合う。 脳には栄養としてブドウ糖が欠かせないので、受験生や働き盛りのお父さんにお薦めだ。
 
 「ブドウ」の名の由来は分子構造がブドウの房のようになっているため。別にブドウの味がするからではないが、ブドウのように甘いのは確かである。

2010年5月3日月曜日

体を鍛えすぎると病気になりやすい

夏が近づくと、にわかに筋トレを始める男性が増える。海やプールなどで露出が増えるこの季節、筋肉隆々の逞しい男のほうがモテるに決まってる。 女性はダイエット、男性は筋トレと、それぞれ余念が無い。
 中には、夏が過ぎてもそのまま筋トレが趣味になり、体を鍛えるのが楽しくなった、という人もいる。
 
 健康のためには、運動は欠かすことができない。体を鍛えれば鍛えるほど、抵抗力も高くなり、病気にかかりにくくなる―トレーニングが日課となっている人は、 そんな風に考えることが多い。
確かに、適度な運動は健康の維持に貢献する。しかし、「過ぎたるは尚及ばざるが如し」の言葉の通り、体を鍛えすぎると思わぬ弊害がある。なんと、免疫抵抗力が落ちてしまうというのだ。つまりは風邪を引きやすくなるなど、感染症にかかりやすくなってしまうのである。 体を鍛えれば抵抗力もアップして病気になりにくい…そう信じていた人にとってはショックである。 一体なぜこんなことが起こるのだろう?
 
 事実を先に述べると、身体機能を極限まで高めることを目的とするようなトレーニングを行うと、以下のような現象が起こることが指摘されている。
免疫機能を担う白血球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の減少。 感染症にかかる危険性の増大。 免疫力の低下。 活性酸素の過剰による筋損傷。ガンや動脈硬化、脳梗塞など各種疾病の危険。
 
 NK細胞はリンパ球の一種であり、リンパ球は白血球の仲間である。ご存知のように、白血球は体内に侵入してきた菌や有害な細胞を捕食するなど、免疫機構の最重要の役割を担っている。
運動時には、ストレスホルモンである糖質コルチコイドという物質が副腎から分泌され、これがリンパ球、NK細胞を減少させると考えられている。 これらの免疫機構が弱まれば、当然感染症にかかりやすくなる。
トップアスリートといわれる人が案外風邪をひいたりしやすいといわれるのは、このことと無関係ではない。
 加えて、白血球の一種である好中球とマクロファージは、細菌に対する攻撃手段として活性酸素を用いる。しかし活性酸素は健康な細胞も攻撃してしまう。 激しい運動をすると、これらの白血球が活性化し、多量の活性酸素を筋肉中に放出する。これが筋肉痛の原因と思われる。
 こうしたことが続き、過剰に活性酸素が蓄積されると、前述したような疾病―心臓病や糖尿病も―にかかる可能性が増えてくる。
 
 勿論、これはスポーツ選手のような過度な運動を続けた場合のことで、適度に反復される軽い運動程度ならば、何も心配することは無い。
また逆に、運動をしなければ病気にかかりにくいかというと、そういうわけではない。運動不足も白血球の低下を引き起こし、免疫力の低下に繋がる。
やはり、ほどほどに運動するのが一番良いということである。

2010年5月2日日曜日

ハイオクとレギュラーガソリンの違い

「ハイオク」ガソリンはレギュラーガソリンとどう違うのだろうか。値段も高いことだし、なんとなく高級だということはわかるが、具体的にどう成分が違うのか。
 少し車に詳しい人なら、「オクタン価」が違う、という答えが返ってくるかもしれない。オクタン価が高いのがハイオクガソリン、その認識は正しい。しかし、「ではオクタン価とは何か」と尋ねられると、「う~んなんか濃い方がいい成分じゃないの?」と、お茶を濁してしまう人も多い。
実際オクタン価とは何だろう。
 
 オクタン価の正体の前に、よいガソリンとは何か、ということについて考えたい。
ガソリンの役目は、なにはなくとも安定した出力が得られることだ。ガソリンが原因でエンストするなど言語道断、エンジンの点火系統にも異常が起こってはいけない。 走り屋の方々は、恐らくガソリンの銘柄にもこだわることも少なくないのではないだろうか。
 そして、実はそのガソリンの良し悪し、つまりいかに安定して燃えるか、ということを指標化したのが「オクタン価」と呼ばれる数値だ。
具体的には、「耐ノッキング性能」すなわちノッキングの起こりにくさを数値化したものなのだ。ノッキングとは、燃料の異常燃焼のことだと思ってもらえばよい。適切に燃焼が行われないと、エンジンにダメージを与え、走りに悪影響を及ぼすことになる。こうした状況をいかに減らすかがガソリンに求められるクオリティだ。 
ハイオクガソリンの場合、オクタン価は96以上なければならない。スタンドで販売されているものは98~100のものがほとんどで、なかなか高性能といえるだろう。レギュラーの場合オクタン価は90から96ということが多い。
 
 さて、オクタン価の正体は分ったが、「オクタン」とは一体何なのか。
オクタンはガソリンに実際に含まれる物質だ。炭素と水素の化合物、すなわち炭化水素であり、化学式はC8H18。化学式からも極めて燃焼しやすい物質であることが容易に理解できる。
 そして、オクタンの価はガソリン中に含まれる「イソオクタン」を基準としている。イソオクタンは安定して燃焼するため、ガソリンに含まれる割合は大きい方がよい。逆に、耐ノッキング性能の低いオクタン系の物質もあり、それらがガソリン中に含まれているとオクタン価は下がる。
 
 ハイオクガソリンのオクタン価が100前後であることは前述したが、ではレギュラーガソリン車にハイオクを入れたら性能や燃費は向上するのだろうか?
これは、一概に言える問題ではない。基本的に、レギュラー車はレギュラーガソリンを入れた時に最適のパフォーマンスを発揮するよう設計されている。そのため、ハイオクを入れても性能が上がるどころか、調子が悪くなり燃費が下がってしまう可能性のほうが高い。だが、排気量の大きい車など、一部の車種ではハイオクを入れると燃費が上がるということもあり得る。実際、ENEOSヴィーゴなどはレギュラー車にハイオクを入れても問題ない、という見解を出している。(但し、これは洗浄剤、摩擦調整剤がレギュラー車にも効用があるということであり、燃費が向上するかどうかは疑わしい)
 逆に、ハイオク仕様車にレギュラーを入れたらどうなるのか?実は、よほど古い車でない限り、ハイオク車にレギュラーを入れた時の点火セッティングがコンピューターに組み込まれており、実害はないようになっている。レギュラーを入れるのは「想定済み」なのだ。 だが、もちろんハイオクを使った時と比べて燃費は悪化する。
 ハイオク車にしろレギュラー車にしろ、指定燃料を入れておくのが無難、というのが当然ながら一般的な見方のようだ。

2010年5月1日土曜日

自動販売機

現在は自販機では実に多様なものが販売されている。
ドリンクやタバコは言うに及ばず、切符、入場券、たまご、米、納豆、おでん、新聞、雑誌、CD、DVD、花に下着などなど…中でもよく利用するのがドリンクやタバコなどを買うときと、電車の切符を買うときだろう。ところで、この二種類の自販機には決定的な違いがあることにお気づきだろうか。
それは、硬貨投入口の形。飲料類自販機の投入口は横型だが、駅で切符を販売するものは縦なのである。
これは一体なぜなのだろうか?
言うまでもなく、自販機は入れられたお金が何円かを識別しなければならない。
コインの大きさや重さ、色などでそれを行うわけだが、この識別装置の設置方法の違いが、縦型と横型の差を生んでいるのである。
縦型の投入口だと、入れられたコインはコロコロ転がって素早く識別装置に入り、商品が購入可能になる。
少しでも遅ければ客にストレスを与え、行列ができて業務にも支障をきたす。そこで、切符の発券機には縦型の投入口が採用されているのである。
では、なぜ飲料用の投入口は横なのか。飲み物を買うときだって早いに越したことはないはずだが?
実は、縦型には欠点がある。識別装置がスペースを取ってしまい、自販機のサイズが大きくなることだ。
対して、横型を使うとコンパクトに収まる。飲み物やタバコなどの自販機は、設置場所の都合上、なるべくスリムなデザインにしなければならない。
その上で、商品を可能な限り多く入れる必要がある。多少処理は遅くとも、場所を取らない横型投入口を使ったほうが有利、ということなのである。
穴の形状の差は、販売商品や利用者に合わせて、これ以上ないほど考え抜かれているのだ。
また、最近は投入時にコインが入れやすく、誰でも利用しやすいユニバーサルデザインの自販機も登場している。
使いやすさのために日々たゆみない努力を続ける自販機メーカーの方に改めて敬意を表したい。
そして飲み物の値段、もう少し下げてもらえないだろうか。