2010年5月5日水曜日

光の正体

かの大詩人、ゲーテの最後の言葉は「もっと光を!」だったという話がある。 まあ、単に部屋が暗かったのだという説や、そもそも何も言わずに逝ったのだという説もあるが、これはなかなかの名言である。
光がなければものを見ることも出来ないし、そもそも私たちは誰一人として生きていけない。
 しかし、それほど重要な「光」なのに、実体を正しく把握するのは極めて難しい。 科学者でも完全に光の性質を理解してるとはいえないのである。 そう、光といいながら、正体は闇に包まれているといっても言い過ぎではないのだ。
 だが、それでも科学者たちの「もっと光を!」というたゆみない努力により、光の性質は少しずつ明かされてきた。 そしてそれは、私たちの常識からすればとんでもない特性を持つ、ということが分かってきた。
 
 ではそもそも、「光」とはなんだろうか。
光は、電磁放射の一形態のうち、人間の目に感知できるもの、と定義される。
電磁放射とは、例えば電波、また電子レンジに使われるマイクロ波、レントゲンのX線、更に赤外線や紫外線も含まれる。そして、このうち目に見えるものを光と呼んでいるわけである。
 現在の解釈では、光は波と粒子の両方の性質を持つ、という見方が一般的だ。 あるときは波として、あるときは粒子としての振る舞いを見せると考えられている。
また、光には質量がないとされている。確かに存在し、エネルギーを持つのに質量がない。これも興味深い特性である。
 
 そして光の性質として絶対的な法則がいくつか存在する。
その一つが「光速度不変の原理」である。これは、光は真空中では、いついかなるときでも一定の速度で進む、ということ。その速度とは、秒速29万9792.458メートル。つまり秒速約30万キロメートルである。
時速50キロで走る車から、30キロのスピードで前方にボールを投げたとしよう。するとボールの速度は50+30で80キロになる。 ところが、光はこの計算が成り立たない。時速1万キロのロケットから光を発射しても、1万+光の速さとはならず、光は依然として秒速30万キロで進むのである。もちろん、これは進行方向と逆向きに光を発射しても同じことだ。
 ちなみに、この「光速度は常に一定」という原理こそが、相対性理論のマスターキーとなってくるのである。
 
 もう一つの光の基本原理。それは、「いかなるものも光の速度を超えられない※」ということ。
ロケットをどんなに加速したとしても、絶対に光の速さは超えられない。加速すればするほど、重くなってしまうからである。この辺のことは相対性理論が大いに関係してくる問題である。
 
 上に挙げたものは光の持つ性質のごく一部に過ぎない。 この世界は難しいけれど面白く、奥が深い。
光の正体が完全解明される日が一日も早く来ることを期待したい。
 
※光の速度を超える性質を持つものは理論上は予言されている。だがそれは光の速度以下になることが出来ないという、理解に苦しむ特性である。