2010年5月3日月曜日

体を鍛えすぎると病気になりやすい

夏が近づくと、にわかに筋トレを始める男性が増える。海やプールなどで露出が増えるこの季節、筋肉隆々の逞しい男のほうがモテるに決まってる。 女性はダイエット、男性は筋トレと、それぞれ余念が無い。
 中には、夏が過ぎてもそのまま筋トレが趣味になり、体を鍛えるのが楽しくなった、という人もいる。
 
 健康のためには、運動は欠かすことができない。体を鍛えれば鍛えるほど、抵抗力も高くなり、病気にかかりにくくなる―トレーニングが日課となっている人は、 そんな風に考えることが多い。
確かに、適度な運動は健康の維持に貢献する。しかし、「過ぎたるは尚及ばざるが如し」の言葉の通り、体を鍛えすぎると思わぬ弊害がある。なんと、免疫抵抗力が落ちてしまうというのだ。つまりは風邪を引きやすくなるなど、感染症にかかりやすくなってしまうのである。 体を鍛えれば抵抗力もアップして病気になりにくい…そう信じていた人にとってはショックである。 一体なぜこんなことが起こるのだろう?
 
 事実を先に述べると、身体機能を極限まで高めることを目的とするようなトレーニングを行うと、以下のような現象が起こることが指摘されている。
免疫機能を担う白血球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の減少。 感染症にかかる危険性の増大。 免疫力の低下。 活性酸素の過剰による筋損傷。ガンや動脈硬化、脳梗塞など各種疾病の危険。
 
 NK細胞はリンパ球の一種であり、リンパ球は白血球の仲間である。ご存知のように、白血球は体内に侵入してきた菌や有害な細胞を捕食するなど、免疫機構の最重要の役割を担っている。
運動時には、ストレスホルモンである糖質コルチコイドという物質が副腎から分泌され、これがリンパ球、NK細胞を減少させると考えられている。 これらの免疫機構が弱まれば、当然感染症にかかりやすくなる。
トップアスリートといわれる人が案外風邪をひいたりしやすいといわれるのは、このことと無関係ではない。
 加えて、白血球の一種である好中球とマクロファージは、細菌に対する攻撃手段として活性酸素を用いる。しかし活性酸素は健康な細胞も攻撃してしまう。 激しい運動をすると、これらの白血球が活性化し、多量の活性酸素を筋肉中に放出する。これが筋肉痛の原因と思われる。
 こうしたことが続き、過剰に活性酸素が蓄積されると、前述したような疾病―心臓病や糖尿病も―にかかる可能性が増えてくる。
 
 勿論、これはスポーツ選手のような過度な運動を続けた場合のことで、適度に反復される軽い運動程度ならば、何も心配することは無い。
また逆に、運動をしなければ病気にかかりにくいかというと、そういうわけではない。運動不足も白血球の低下を引き起こし、免疫力の低下に繋がる。
やはり、ほどほどに運動するのが一番良いということである。